アイスの実、まるごと愛すのみ

ここ数年、好きだった人が嫌いになって、嫌いだった人が好きになる現象がけっこう起きている。

 

好きだった人が嫌いになるのは、その人の「あっ、その発言はちょっときついな」とか「あっ、そういう一面は知りたくなかったな」みたいな瞬間に発生する。この「あっ」に触れるときはだいたい距離感のバグによって発生するものなのでそういう時はそっと離れるのがいちばん。

 

しかしながら根に持つタイプなのでしばらく経ってコミュニケーションを取るときも、頭の片隅に嫌な記憶が座敷わらしのように鎮座しつづけちゃう不便な私の脳ミソ。でもそういう自分が感じた違和感や憤りを無視して生きたくはないので、そいつらと殴り合い手を取り合いながら図太く生きてる。

 

もちろん好きだった人が嫌いになるって、自分が都合のいいようにその人の像をつくりあげてしまっていたのが原因なときもある。

 

とくに第一印象がいい人に多い。やっぱり好印象からのスタートだと見たくなかった部分がぽつぽつと目につくようになる。あとになって発覚する週刊誌の記事みたい。

最初からまるごと信じ切った私が悪いのですが。ええ、ハナからワンハンドレッドパーセント以上あなたのことを信じた私が悪いのですが。

 

逆に、嫌いだった人が好きになるのは、私が最初に感じた好ましくない印象をひっくり返す人。そもそもこれもファーストコンタクトで自分の先入観とか偏見がしゃしゃり出てきて「こいつは無理」グループに勝手に分類しているのが本当にだめなんだけど。

 

印象をひっくり返された例でいうと、千葉雄大が世に出てきたとき、「はいはい、甘いフェイスで甘い言葉を囁くあざと子犬系男子地区にお住まいの方ね」とグループ分けをして当時綾野剛とか瑛太とか演技力もあってかつ大人の魅力がある俳優が好きだった私は一瞬で好きじゃないなと思った。でもこの前田中みな実弘中ちゃん山ちゃんがやってる「あざとくて何が悪いの?」に千葉雄大がゲスト出演してたとき、その甘いかわいさに磨きがかかっていてなおかつリアクションや話し方さえもあざとさに全振りしていたからむちゃくちゃ好きになった。

 

振り切ったキャラクターってめちゃくちゃ魅力があるんだよ。アイドルってそういうことでしょ。私が好きな有名人もみんなそう。キムタクもaiko松岡茉優も、みんなそう。ストイックで抜け目がない。

 

リアルでの人間関係を一つ書くとすると(これを読める範囲内の人のことではない)、笑いのラインが合ってない人って本当にきついなって最近思っている。

 

私の誰かに対する好き嫌い逆転現象もほとんどこれが起因してる。相手がおもしろいと思って言った冗談が私の触れてはいけない部分を撫でてしまうもんだから、好き嫌いのメーターが逆方向に勢いよく振り切れてしまう。

 

どこまでが笑える冗談かのラインが近しくない人同士で喋ってしまうと片方の冗談が片方のことを傷つけてしまうし、でもそれでいて言った側は冗談だと思って言っているのでなにも気にしていない(そこが腹立つ!)。あなたのユーモアは配慮や尊重がたりません!愛のないいじりは笑えないのです!知ることからはじめましょう!

 

「ユーモアで人を傷つけない」なんて勿論めちゃくちゃ自戒だけど、それでも私の冗談が誰かを傷つけてしまったことなんてざらにあるんだろうな。だって傷ついた側は言った張本人に「私は傷つきました。謝ってください」なんて言えないから。それを言える度胸があったら最初からそいつと友達やってねえんだよな。本人だけ抱えて、それがつもりつもって爆発しちゃうから人間関係が壊れるのは一瞬。

 

これを解決できるのって、言われた側が我慢してへらへらするか、その人との関係をフェードアウトするかの無慈悲な二択しか私の中にはなくて、人に媚びたくないくせに争い事が嫌いな性分な私はきっと後者を選んでしまう。

 

ゆえに私はやさしい人に惹かれてしまう。アイスの実みたいに、袋のなかのどれを取っても、均一に甘くていつ食べてもおなじ味がする人。いつもおなじようにやさしく接してくれて、まるっと包み込んでくれるみたいに話してくれる人。
そんな果実みたいにみえる人がいたらきっと私は自分をゆだねてしまう。ゆだねてしまうだろうし、私はそういう人が好きで、そういう人になりたい。変わらないものなんて存在しないこの世界で、不変な愛だけは惜しまない。一瞬は永遠だ。